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音生命 (おといのち) ♪Let's make Rebirther
<2009/04/29> ←前へ 次へ→
特別編6 FE208ES-R用BH D-58ESRの製作 (2008/2/10 開始 〜 2009/07/05 更新)
スピーカー D-58ESR(by鈴原透慈) 動画 透視動画 寸法図 板取図 板材カット約¥66,000/本(税込、米屋材木店
D-58ESR(by鈴原透慈)
十年ぶりのスピーカー自作、それも大型BHとなると相当な気力が必要になる。十年前は三十代で平日にも工作を進めて僅か一ヶ月でD-58を製作した。しかし、四十代も半ばの今回はシナ・アピトン積層合板の並外れた重量に気圧され(サブロク7枚で140kg!)、また、初めての工法(釘に替わってFビス、油性ニスに替わってオスモカラー)ということもあって、ついつい及び腰となり、2月に内側バッフルと天板を組み上げてから半年以上も間が空いてしまった。さすがにこれではイカン、と重い腰を上げて製作を再開。ほとんど休日にしか工作できないので数ヶ月かかると思いマスが、最後までお付き合いいただけたら幸いである。(2008/8/21)
(1)接着用の道具について
ステンレス細コーススレッドネジ トリトン コードレスプランジドリル タイトボンド(オリジナルとイクステンド)
ステンレス細コーススレッドネジ トリトン コードレスプランジドリル タイトボンド(オリジナルとイクステンド)
日曜大工の世界も10年前とはすっかり様変わりして、釘の替わりに細コーススレッドネジ(Fビス)が主役になっている。釘よりも締結力が大きいというメリットがあるので、今回はそれを使う。長さは38mmと32mmのステンレス製。ステンレスなので非磁性体と思っていたら、耐摩耗製品であるFビスに使われるマルテンサイト系SUS410には磁性があるので、ユニット周りの使用には要注意。
ネジを埋め込むドライバーはオーストラリア・トリトン社のコードレスプランジドリル。プランジを伸ばして垂直穴開け等が簡単に出来る優れモノなのだが、白人用で大きく重いため、日本では2007年夏に販売終了。更に残念なことに2008年現在、トリトン商品群は親会社のGMC社の諸事情により製造中止となっている。製造再開に向けて努力はしているそうだが、入手は不可能だと思う。
接着剤は10年前と同じく、定番のタイトボンド。粘度が低く、乾燥時間が早く、硬化後もサンディング可能で言うこと無しだが、天板や側板など大面積の2枚貼りでは、5分という作業時間の短さがネックになる。そこで、作業時間15分のイクステンドも使ってみる。
(2)塗装について
オスモカラー エキストラクリアー オスモカラー ウォルナット オスモパテ
オスモカラー エキストラクリアー オスモカラー ウォルナット オスモパテ
スピーカーの仕上げは昔から艶消しクリアーが好みで、D-55やD-58は塗膜が丈夫な油性ニスで仕上げてきた。昨今は水性ニスでも油性並みに丈夫な物が出回るようになってきたようだ。シンナー臭が無く、取り扱いや後片付けが楽と言うのは大きなメリット。
しかし、音質面を考えた場合、ニスがベストなのだろうか。無塗装、ステイン、ラッカーなど選択肢は色々あるが、塗膜を作るタイプは音道内に塗ると、反射の悪影響が出やすいと考えられる。そこで、今回は塗料が木材に浸透するステインタイプ、それも無公害塗料の独オスモカラーを使ってみることにした。乾燥には12時間も掛かるが、匂いがおだやかで室内作業可能な点が良い。普通のオスモカラーは粘度が高く塗装に若干のコツが要るそうだが、艶消しのエキストラクリアーは粘度が低く、簡単に塗装できる。ただ、側板と底板はウォルナットで仕上げてみようと思う。そうすると、このページのトップ画像のようにスリムに見えるハズ・・・と期待。
(3)製作進行状況
 2008/02/10 
内側バッフル
1.内側バッフル
内側天板
2.内側天板
内側バッフル内空気室の工作は木口を揃えることに留意さえすれば、それほど難しいことは無い。最下段の板は、表にビス頭を出したくないので、8mmの木ダボ5本で接合した。内側天板の方は接着した後に気がついたが、真ん中の補強桟の長さが片側だけ0.5mmほど長く、後で現物合わせの削りが必要だろう。また、スロート調整用の両端の板をビスで留めてしまったが、これはこの段階ではなく、第一音道の組立て時にビス無しでクランプ圧着をした方が、垂直度や寸法の誤差を吸収できるはずなのでベターだと思う。

 2008/08/21 
第1音道入口
3.第1音道入口
第1音道出口
4.第1音道出口
空気室と第一音道を構成するパーツを組み立てて、天板と仮組み。スロート入口は、オリジナルD-58よりも扁平感が減少して、見た目にいい感じだと思う。第一音道の出口は広めだが、前頁の長岡先生の説明のとおり問題は無い。むしろ、ここをオリジナルどおり77mmにしてしまうと、ホーンの効きがダンプ気味になり、巷間でよく言われる『低域不足』のBHに仕上がってしまうのではないだろうか。

 2008/09/30 
天板接着
5.天板接着
二重天板
6.二重天板
最初の2枚貼りは天板の接着である。クランプはドイツ・ベッセイ社のワンタッチクランプXV5-100とKLI-20、そして木工用K-60を使用。XVはバネ式なので仮止めに、本格的な締めにはKLI-20とK-60を使った。K-60の樹脂製クランプ部分は平行に出来ているので、今回は木口揃え用として使った。シナ・アピトン積層合板はシナ合板より硬いので、中央部に鉛を40kg載せたにもかかわらず、クランプした部分としていない部分でほんの僅かだが接着面に差が出来てしまった。クランプが20本は欲しいところだ。

 2008/10/09 
鬼目ナットDタイプをテスト(裏側に埋め込み)
7.鬼目ナットDタイプをテスト(裏側に埋め込み)
表側からラチェットで締めても問題なし=>採用!
8.表側からラチェットで締めても問題なし=>採用!
ユニットを取り付けるネジの受け側のナットは何にするか。これは相当、悩んだ。現用の爪付きナットがベストなのかと言えば、定期的に増し締めが必要だし、材質が磁性体の鉄であるし、肉厚も薄目だし、と気になる点が多い。そこで非磁性体で肉厚亜鉛ダイカスト製の鬼目ナットの登場。鬼目ナットにはいくつか種類があるが、写真のDタイプを選択した。バッフルの裏側に埋め込んで使う。

 2008/10/11 
鬼目ナットDタイプを裏側に埋め込み
9.鬼目ナットDタイプを裏側に埋め込み
一旦外してエポキシを塗って再埋め込み
10.一旦外してエポキシを塗って再埋め込み
実際にユニットを取り付けてネジを締める
11.実際にユニットを取り付けてネジを締める
ナットが少し沈んだ状態で最大強度を待つ(約3日)
12.ナットが少し沈んだ状態で最大強度を待つ(約3日)
現物を見れば分かるが、鬼目ナットDタイプの本体はテーパー構造になっており、下穴とナットの隙間をエポキシ接着剤で埋めることで、スーパーナットのように面締結力の効果が期待できる。エポキシ接着剤は強力なほど良いので、アラルダイトの12時間硬化型を使った。ただし、12時間で達するのは実用強度で、最大硬度には72時間が必要(温度23度の時)。
なお、工作後に情報を得たが、米J-Bウェルドのオートウェルド(WELD=溶接)という接着剤がその名のとおり、溶接なみの強度で、そちらが良いかな・・・と思ったら、高強度のために硬化剤に鉄粉が含まれているとのこと。ユニット周辺での使用はOUTだと思う。

 2008/10/20 
背板と底板を接着
13.背板と底板を接着
仮組みした音道の様子
14.仮組みした音道の様子
背板と底板を接着。木口がずれないように注意するのは、すべての音道に共通であるが、実際には板の裁断精度や工作の腕もあって、ズレがゼロというのは極めて困難。不可能だと思っていた方が良いくらいだ。見た目は揃っていても、指で触れば0.1mm程度の差異が生じているのが分かる。ただ、それくらいなら出っ張りはサンダーで削り、凹みは接着剤を多めに塗ることで、対処可能だ。

 2008/10/26 
バッフルの接着1
15.バッフルの接着1
バッフルの接着2
16.バッフルの接着2
鬼目ナットDを埋め込んだバッフルを接着。ユニットの質量が直に掛かるため、内側からビス留め。下側の木口は前面飾り板と3mmのスリット(隙間)を設ける予定。このスリット内は先に塗装するので、ボンドのはみ出しは丁寧に拭いておく。クランプ総動員である。

 2008/11/03 
スリット部にオスモカラークリヤー塗装
17.スリット部にオスモカラークリヤー塗装
前面飾り段の仮組み
18.前面飾り段の仮組み
スリット部を240番のサンダーで下磨きして、オスモカラーのエキストラクリアーを塗装。板の表面部分は問題ないが、木口は結構、濃い色合いに変化する。12時間経ったら、400番のサンダーで軽く撫でて、エキストラクリアーを2度塗りする。

 2008/11/16 
ビス穴はオスモパテで埋める
19.ビス穴はオスモパテで埋める
バッフルと天板が直角になっていない
20.バッフルと天板が直角になっていない
ユニット取付ネジが振動して音を汚すくらいだから、Fビスも頭が剥き出しのままでは、多少なりとも影響があるかもしれない。そこで、ビス穴はオスモパテで埋める。オスモパテなので、当然、オスモカラーを塗ることが出来る。いま埋めているのは空気室だが、音道内にも同様の処置を行う。さて、組みあがったバッフル+天板のブロック2台分を合わせてみたら、約3mmの隙間が開いてしまった! つまり、バッフルと天板が直角に組みあがっていないのだ。第一音道を組み立てる際に修正が必要だが、さてどのようにするか・・・。

 2008/12/13 
オスモクリアー2回塗り
21.オスモクリアー2回塗り
バッフル裏側デッドスペースにフォックを貼る
22.バッフル裏側デッドスペースにフォックを貼る
直角出しの目処が立ったので工作再開。まずはオスモカラーのエキストラクリアーを2回塗り。冬になって気温が下がったので、1回塗る毎に念のため24時間乾燥させている(通常は12時間)。板の表面が極くわずかに茶色に染まり、木目がきれいに浮かび上がってくる。そして、デッドスペース内に1mm厚フォックを貼る。今回はバッフル裏側だが、対面の音道裏側にも貼る予定。

 2008/12/14 
桟を仮止めして直角出し
23.桟を仮止めして直角出し
鉛60kgを載せ、接着剤の硬化を待つ
24.鉛60kgを載せ、接着剤の硬化を待つ
バッフルと天板の角度が90度未満なので、直角にするためにはどちらかを少し外側へ引っ張る必要がある。そして、その状態を維持しなければならない。やり方は色々あると思うが、直角出しは天板同志を向かい合わせ、バッフル側に錘を載せて浮かないようにし、大型クランプで少しずつ天板を締めていくというやり方を採用した。直角が出たら桟で仮止めして、この状態で接着を行う。
空気室側はネジ止め13箇所で圧着は十分だと思うが、天板側は7箇所と半分程度なので、鉛60kgを載せ、接着剤の硬化を待つ。

 2008/12/22 
フォック貼り付け前
25.フォック貼り付け前
デッドスペース内前後と補強材表面にフォックを貼る
26.デッドスペース内前後と補強材表面にフォックを貼る
1mm厚フォックによるダンプは、本当は音道内全部に貼りたいのだが、コスト的に無理なので、特に効果があると思われる箇所だけに貼る。デッドスペースは上下の板は補強材や飾り板が付くので強度的に問題は無いが、前方のバッフル側は2枚重ねが半分程度、後方の音道側は1枚のみで特に振動しやすいはずなので、まずここに貼る。それから空気室内の補強材は、バッフルを強固に支えているために振動が盛大に伝わってくる。前後を連結する補強材ではその振動の逃げ場が無いために新たな振動の発生源となる可能性がある。最近のフォステクスのスピーカーでは、その対策として隙間を設けた補強材を用いている。それを真似るという手もあるが、今回は補強材に制振材であるフォックを貼る事で、補強材表面からの不要振動の放射を抑制させるという手段を採った。

 2009/03/08 
木ダボ接合の前準備(下穴加工)
27.木ダボ接合の前準備(下穴加工)
スペーサーで平行を維持しながら接着
28.スペーサーで平行を維持しながら接着
前面飾り段の裏側に連結する音道は、飾り段で隠れる部分にはFビスを使うが、最下部はビス頭が見えてしまうので、8mmの木ダボで接合する。下穴ドリルと木ダボとマーキングポンチがセットになった「木ダボセット」が市販されているが、ドリル径が7.5mmで、木ダボは玄翁で叩き込まないと下穴に入らない。また、木ダボの長さが20mmと少し短い。なので、セット品は使わずに、8mmドリルと長さ30mmの木ダボを使う。マーキングポンチは有れば便利だが、大抵7.5mm用なので、テープ等を巻かないとセンターが微妙に狂う。いずれにしても、アマチュア工作では完璧な精度は望み得ないので、生じたズレは、下穴や木ダボを削って調整するしかない。

 2009/03/15 
前面飾り段の接着前
29.前面飾り段の接着前
前面飾り段を接着&塗装
30.前面飾り段を接着&塗装
前面飾り段を接着して、オスモカラーのエキストラクリアーを塗装する。木口がずれないよう気を付けて、両端をクランプで12〜24H固定してから、次の段を接着していく。何気に結構、地味な作業だ。これで、ようやく前面+天板ブロックの組立てが完了した。

 2009/03/29 
前面+天板ブロック
31.前面+天板ブロック
背面+底板ブロック
32.背面+底板ブロック
前面+天板ブロックと背面+底板ブロックの木口のずれ(出っ張り)をサンダーで削って、オスモカラーのエキストラクリアーを塗装。このまま一気に両者を接着してしまいたい所だが、そうするとスピーカー全体が横倒しか、うつ伏せ状態になって場所を取ってしまう。自分の家はそんなに広くないので、そうなると、後の工作を進め難くなってしまう。なので、先に内側前方の側板を塗装しておき、それも接着してスピーカーが自立するように工作を進めていく。ちなみにデッドスペースの吸音材にはサウンドスフィアを使用する予定だ。

 2009/04/26 
内側前方の側板の塗装
33.内側前方の側板の塗装
(前面+天板)+(背面+底板)
34.(前面+天板)+(背面+底板)
内側前方の側板をオスモカラーのウォルナットとエキストラクリアーで2度塗り。マスキングは現物合わせが大変なので、設計図の寸法で線引きをして、18mm幅のマスキングテープを貼った。オスモカラーは塗って約20分後に板材に染み込まなかった分を拭き取るのだが、最初、着古しのシャツで拭き取ったら着色剤まで吸い取ってしまい色が薄くなったので、再塗装してホームセンターで売っているウエスで拭き取って事なきを得た。マスキングテープは拭き取りが終わって塗料が乾く前に剥がすのが常道。側板の塗装が済んだら、いよいよ大型ブロックの前面+天板と背面+底板を接着する。これでもう、側板を付けない限り起こす事は出来ない。

 2009/04/29 
サウンドスフィアPIECE
35.サウンドスフィアPIECE
バッフル下部デッドスペースに詰める
36.バッフル下部デッドスペースに詰める
バッフル下部のデッドスペースに詰める吸音材は10年前のD-58ではニードルフェルトを使ったが、現在販売されているニードルフェルトは当時の物と違って1cm程度の薄い物しかない。そこで他の素材を検討。グラスウールは論外、ミスティックホワイトは高価、最近登場したシンサレートが良さそうだなと考えていたところ、サウンドスフィアの存在を知った。素材はサーモウールで、これは羊毛にポリエステル繊維を配合した物だ。主に建築用の断熱材として使われているが、吸音材としても優れており、調音・吸音ボードが商品化されている。今回入手したのは、サウンドスフィアの中身で910×455×20mmのPIECEだ。入手先はEMC設計。ボード(板)と言うだけあって、結構、高密度に成形してあり、丸めたり折ったりはまず出来ない。はさみでは切断が難しく、大型のカッターナイフが必要だ。360×145mmにカットした物を5枚、バッフル下部のデッドスペースに詰めた(6枚は無理だった)。

 2009/04/30 
内側前方の側板の接着
37.内側前方の側板の接着
自立するD-58ESR
38.自立するD-58ESR
タイトボンドのイクステンドで内側前方の側板を接着する。左右片方ずつ乾燥に各々24Hかけて2日後にようやく自立したD-58ESRは、ご覧のとおり結構スマートでスリムな感じに仕上がりそうで、まずは一安心。作業的には、背板と側板と底板の二重化および内部配線処理が残っており、音出しまでにはもう少し時間が必要だ。それにしても、大きくて重い。完成したら60kg以上になるかな?

 2009/07/04 
背面二重化・左右板の接着
39.背面二重化・左右板の接着
背面二重化・中央板の接着
40.背面二重化・中央板の接着
背面の二重化で左右・中央と三枚の板を貼り付けるが、この板同士は木口をペーパーで若干削ってコンマ数mmの隙間が出来るようにしておき、接着はしない。これを接着してしまうと、背面と一体化して盛大に鳴いてしまう恐れがある。隙間を設けて中央の板を若干振動し易くすることで、背面の振動吸収効果の増大を図る。

 2009/07/05 
背面取っ手の接着準備
41.背面取っ手の接着準備
背面取っ手を接着する
42.背面取っ手を接着する
現用D-58と同じように、背面に取っ手兼用の追加補強を行なうことにした。これで、運搬や設置が楽になる。本体の質量がかなりのものになりそうなので、木ダボ埋め込みで強度を稼ぐ。補強板は約7cmの余り板を使用。位置はスピーカー下端から66cm。自分の場合、立って指を掛けやすいのが、ここなのである。
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