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音生命 (おといのち) ♪Let's make Rebirther
<2007/02/24> ←前へ 次へ→
6.マイ・システム 6)スピーカー 故長岡鉄男先生設計 D-58
スピーカー 自作D-58+FE208ES (2001/04〜使用中) 追加投資 約12万円
ES化D-58 ES化D-58とゴトウユニットSG-16TT
<D-58について>
生涯に数百機種の自作スピーカーを設計されたオーディオ評論家、故長岡鉄男氏の設計によるバックロードホーンの集大成に当たる機種。1996年秋にFOSTEXの限定ユニット6N-FE208SS用として発表。それまでの自分の長岡バックロードホーン遍歴はオリジナルスワンとD-55。D-55の低域は40Hzまでだが、D-58は30Hzまで伸びているということで、製作を決意。ユニット頒布と同時に実施された板材カットサービス(21mm厚シナ合板、税別¥68,000/台)を利用して、組み立ては自分一人で行なった。板材には、STEREO誌1996年4月号掲載のフルーティストの加藤元章氏のSS-66「モアイ」製作記事内にあった、『作る前にゲンゲン(玄々化学)のクリヤラッカーワシン(和信化学)のうすめ液を1:1.3で溶いたものを裏表全てにまず塗装』 を施してある。この工程は、加藤氏の場合はモアイをモニタースピーカーとして録音現場へ搬入した際に、外気との温度差で箱内部が結露して板材が湿気るのを防ぐための対策であるが、自分の場合は工業用にも使われている合成樹脂が板材の表面に染み込むことで、鳴きの防止に多少でも役立つのではないかと考えて行なった。また、接着剤には米国製で強力なタイトボンドと丈夫なステンレス釘を使ったので、箱の強度は一般的な酢酸ビニル系の木工用ボンド+鉄釘の組合せより大きいはずだ。仕上げはつや消しクリアーニスで塗装。幅444×高さ1,042×奥行き553mm。質量は箱だけで約50〜60kgあると思う。その後、次項で紹介するFE208ESの登場で空気室の奥行きを増やしたD-58ESが発表されたが、自分は真鍮リングの併用でユニットをFE208ESに交換したES化D-58を継続して使用中。
FE208ES正面 FE208ES斜めから
ステンレスねじ&純チタンワッシャ
<スピーカーユニットFE208ESについて>
21世紀目前の2000年、FOSTEXから突然変異の限定ユニットFE208ES(税別¥38,800/本)が登場した。質量は何と10kg。一見して分かる変更点は振動板で、208SSまではサブコーン付の紙パルプであったが、ESでは星型凹凸模様のHP形状振動板で強度がアップ、材質も澱粉質を含む芭蕉系繊維を原料として繊維同士の擦れによる紙臭さを低減したESコーンになった。エッジはロールエッジから、逆共振を排除して小音量から大音量まで応答性に優れたUDRタンジェンシャルエッジに。磁気回路は、208SSまではマグネットの大型化や2枚重ねによる強化がメインであったが、ESでは反発する2枚のマグネットの間にプレートを挿む反発磁気回路を採用して、BL(力係数)値の向上が図られている。この変更により奥行きが増えたので、D-58にはそのままでは取り付けられない。FOSTEXではアダプターとして15mm厚の真鍮リングP208(税別¥22,000/個)を用意、これで取り付けOK、ルックスも音質も向上する。D-58のバッフル裏には鬼目ナットが埋め込んであり、40mmねじでユニットとリングを共締めしている。

<フレームと真鍮リングのダンプ>
フルレンジは再生帯域の全域でピストンモーションはしておらず、必ず分割振動している。『フルレンジの中高域は分割振動で歪むから汚い』 という意見をよく見かける。FE208ESのHP形状振動板は分割共振を分散させているから、中高域の歪みは他のフルレンジより少ないはずなのだが、そのFE208ESの中高域でさえ貶す人は多い。しかし、本当に振動板以外に歪みの要因は無いのか。そこでクローズアップされるのが、振動板の周囲のアルミダイキャストフレームや真鍮リングといった金属塊である。実はこれらの部位は盛大に微少振動しており、前述した208ESのHP形状振動板がせっかくきれいに再生した中高音を汚してしまっている。これはユニット取り付けネジの中間位置に、微少振動の制振性能に優れたフォックを貼り付けてみれば、よく分かる。アルミダイキャストフレームのフルレンジユニット使用者には必須の対策と言ってよい。そして、次項の取り付けネジ対策と合わせ技にすれば、更に効果大だ。

<ユニット取り付けネジの変遷>
フレームが振動しているくらいだから、当然それをエンクロージャーに固定しているユニット取り付けネジも振動している。この部分の対策は変遷が激しいので、下の年表に纏めた。なお、『ボルト』は六角穴付きキャップボルト、『ねじ』は鍋小ねじ。締め付けはボルトの方が有利だが、音場感への影響という面では、ねじ頭の高さが低い鍋小ねじの方が有利だ。
年 月 ユニット取り付けネジ ワッシャ 備 考
2001年 4月 ステンレスボルト バネ座金 バネ座金は緩み止め目的だったが、あまり効果なし
2002年 9月 同 上 バネ座金追放(音の濁りの原因)
2004年 6〜7月 純チタンねじ フレームと真鍮リングをレゾナンスチップ・クライオでダンプ
12月 64チタン合金ボルト フレームと真鍮リングに貼ったレゾナンスチップを撤去
2005年 1月 同 上 鉄(実験) ボルトの頭部とフレームの密着度を改善
3月 同 上 64チタン合金
2006年 4月 同 上 同 上 フレームと真鍮リングをフォックでダンプ
5月 同 上 純チタン 異種素材によるダンプ効果を得るため
6月 ステンレスねじ 同 上 2006年6月の日記参照
現在のところ、水性フォックを塗布してダンプしたステンレスねじ+純チタンワッシャで落ち着いている。
<スピーカーの使いこなしについて>
1)質量付加
オーディオ評論家の故長岡鉄男氏は、スピーカーの質量は振動板質量の10,000倍が理想と主張されていた。FE208ESの振動板質量は15g(前モデル6N-FE208SSは12g)なので、10,000倍は150kg。D-58の質量はシナ合板だと約5〜60kgのはずだから、3,333〜4,000倍でこれはちょっと不足。最低でも5,000倍はオーバーしたい。自分は天板に約85kg、開口部に約60kgの鉛を付加してトータルで約13,000倍の約200kgにしている。開口部の側板の鳴きが減り、また、両側板上に載せた鉛インゴットが擬似ラウンドコーナーとして回折効果を抑えているようで音場感が向上、鉛を追加する前の音に差をつけている。
鉛で質量付加
鉛で質量付加
天板ダンプ(フォック敷き)
天板ダンプ(フォック敷き)
開口部前縁ダンプ(フォック敷き)
開口部前縁ダンプ(フォック敷き)
スピーカーのエンクロージャーに鉛を載せるのは、鉛が重くて(比重が大きい)鳴きにくい(Qが低い)からだ。しかし、どんな素材でも鳴きがゼロということはあり得ない。昔は鉛を載せればそれで良しとしていたが、少しでも不要振動を減らすために、鉛の下に2mm厚フォックを敷くと効果がある。鉛の共振を抑えるとともに、エンクロージャーのダンプにもなって、一石二鳥の対策だ。
2)エンクロージャーのダンプ
不要振動の低減が目的であれば、エンクロージャーそのもののダンプも行なうべきだろう。バックロードホーンは開口部側板と背板の2箇所が面積が大きく振動しやすい。そこをコンコンと叩いて振動が大きい場所にフォックを貼っていった。特に背面は補強が万全でないので盛大に振動、それが背後の壁に反射して再生音を汚していたようだ。フォックを貼ることで音場や音像が明確になり、楽器の質感が向上、弱音部まで聴こえるので演奏のニュアンスがとても把握しやすい。オーディオはまず音ありきだが、それをクリアーした上で、演奏者はもちろん、作曲者の意図まで伝えられるような、レベルの高い変換器=真の『再生』器を目指すのが目標だ。
開口部側板ダンプ
開口部側板ダンプ
背板ダンプ
背板ダンプ
背面ダンプ
背面ダンプ

3)エンクロージャー表面の不要振動の影響の軽減
自作スピーカーは工作の容易性を考えると、どうしても平面を有する板材で構成せざるを得ない。しかし、平面は振動や共振が発生しやすい。これは、平面や平行面が無い涙滴や卵型のメーカー製スピーカーを聴いてみると明らかで、特に音場感で差が付く。そこで、少しでもエンクロージャー表面の不要振動の影響を軽減するために、自分はスピーカーの側面にオーガンジー・パーティション(絹の紗)を掛けている。こうすることで側板表面の不要振動が吸音されるので、音場感が向上する。つまり、不要振動でマスクされていた微少音が再現されるわけだ。スピーカー側板に面した壁にもオーガンジー・パーティションを掛けると壁の反射が低減して、相乗効果が得られる。オーガンジー・パーティションの入手についてはアールアール(TEL 0466-62-7801)まで。なお、近年、江川三郎先生が提唱されているグリーンディフューザー(観葉植物をスピーカー間または側面に設置する)でも同様の効果があると思う。
オーガンジー左 オーガンジー右
<トゥイーターの変遷>
トゥイーターはD-55時代から約10年、FOSTEX・T500A(税別¥65,000/本)を使ってきたが、2004年11月にゴトウユニットのチタン振動板トゥイーターSG-16TTにバトンタッチ(2005年4月の日記参照)。コンデンサーはFOSTEXの高音質コンデンサーCSシリーズを使っていたが、SG-16TTへの交換直前に自然さで上回るフランス製SOLEN・FAST コンデンサーに変更(2004年11月の日記参照)。SG-16TTはメーカーでダイヤフラム交換と再着磁をしてもらって、ほぼ新品状態。当初は音がやや硬く、音圧も不足気味のため0.68µFで接続していたが、約1ヶ月のエージングで欠点が解消されてきて0.47µFでバランスが取れるようになった。しかし、2006年5月にクロスオーバー付近の音が薄いことに気がつき、0.56µFに変更した(下の年表を参照)。
年 月 トゥイーター コンデンサー 容量 備 考
2001年 4月 FOSTEX・T500A FOSTEX・CS 0.47µF T500AはD-55時代から約10年に渡って使用
2004年 7月 同 上 同 上 0.68µF
11月 ゴトウユニット・SG-16TT SOLEN・FAST 0.68µF SOLENの優秀さは楽音よりも自然音でよく分かる
12月 同 上 同 上 0.47µF
2006年 5月 同 上 同 上 0.56µF クロスオーバー付近の音が薄いため、容量変更
ゴトウユニットSG-16TT ゴトウユニットSG-16TT(フォックでダンプ)

<まとめ>
FOSTEXからは2002年春にエッジの頭頂部に切れ込みが追加された後期タイプのFE208ESと、音響特性に優れたシナ・アピトン合板のD-58ESが登場したが、この前期タイプFE208ES+シナ合板のD-58を十分に鳴らし込んでいきたいと思っている。
FOSTEX T500A ゴトウユニット SG-16TT
開口部 開口部の鉛
過 去 の 使 用 機 種
スピーカー 故長岡鉄男氏設計 自作D−58 約30〜35万円
D-58(6N-FE208SS & T-500A)
空前絶後のウルトラ超強力ユニット、FOSTEX・6N-FE208SSを使ったバックロードホーンスピーカー。サイズはW444×H1042×D553mm、重量は50〜60kg。それに鉛を載せて全体で120kg。ユニットの振動板質量が12gなので、スピーカー全体の重量がその10,000倍という、スピーカーの理想を実現している。トゥイーターはFOSTEX・T500Aを0.47µF逆相接続。音はFE206S使用のD-55よりいい。中高音の透明度と音楽の表現力がさらに向上した。
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