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音生命 (おといのち) ♪Let's make Rebirther
<2008/11/24> ←前へ 次へ→
2.エネルギーの源〜電源〜 2)低電磁界配線
(1)電源品質の影響
さて、近年、『電源で音が変わる』のはオーディオマニアには常識となってきている。しかし、それらはコンセントやケーブルなどの市販パーツを試してみただけという、表層的な話が多く、その実態と重要性は未だ多くの人に知られていないように思える。
そこで、まずは電源環境の違いでどのような差が生じるのか、音元出版発行のAV REVIEW誌2004年10月号の「片岡キョージュのホームシアター新論!」第18回『神が宿る場所(応用編・その1)』から、少し長くなるが引用しよう。
通常の電源環境と良い電源環境
図4と図5を比較してみてください。両方とも、パルスを再生させ、スピーカーからの音を約1.8mの距離で計測しました。(中略)図4と図5の計測は、同じ部屋で同じ機器です。しかし、波形は全く違っています。図4は、日本での電源の品位と電磁界環境としては良い環境での再生です。図5は、電源の品位をロンドン郊外程度に上げ、放送波などの電磁波を遮蔽したときの再生です。
スピーカーは、位相が揃っていないタイプですので、最初にトゥイータが逆相で動き、次にウーファーが正相で動いています。図4では、トゥイータとウーファーの振幅が小さく幅が広がっています。図5では、トゥイータとウーファーの振幅が大きく短時間で動作が止まっています。振幅の差は、実に2倍近くになっています。図4では、ウーファーの振動の後に数kHzから15kHzの付帯振動があります。
 図4の環境では、ハイエンドの再生機器を使い、位相が揃ったスピーカーを使用しても、音源の位置を指差すことはできません。
 一方、図5の環境では、位相が揃ったスピーカーを使用すると、音源の位置を指差すことができ、音の仮想現実が出現します。
 通常の電源品位では、図4のように、録音環境の微小音が再生されません。理想に近い音響環境を作っても、電源に含まれる
 ノイズと電磁波を遮断しなければ、音の仮想現実は得られません。
<AV REVIEW 2004年10月号「片岡キョージュのホームシアター新論!」第18回『神が宿る場所(応用編・その1)』>より
つまり、通常の電源環境ではピーク成分が十分に再現されないためダイナミックレンジ(=最大音と最小音の差)が狭く、また、パルスが尾を引くということは、元の信号に無い成分が付加される=本来の信号がマスキングされるということで、写真に例えればピンボケ状態のように細部が不明瞭で、元の情報を認知できなくなってしまうということだ。そして、大方の日本のリスナーの電源環境は図4にも劣る、高電磁界環境にあると思われる。これは、オーディオ装置がどうのこうのと言う以前の大問題である。
(2)低電磁界配線
なぜ、日本と欧州ではこんなに電源環境が異なるのか。その理由は欧州には厳しい電磁ノイズ規制(スェーデンは2ミリガウス以下)があるが、日本では全く規制が無いからである。そもそも、屋内外配線そのものが、諸外国は電界強度が低くなるVVR(ツイスト線)を用いているが、日本ではVVF(平行線)。VVFで配線すると建屋全体でのループ面積が増え、屋内外からの電磁ノイズで起電力が生じてしまう。インバーター照明、携帯電話や無線LAN等が普及した現代では電源環境が著しく劣化して当然なのである。
その辺の対策も含めた情報は、音元出版発行のAV REVIEW誌2008年5月号の「片岡裕のホームシアター新論」第52回『正しい電源の知識と工事(その2)』に掲載された。重要な点をいくつか引用しよう。
AV用の電源コードやコンセント、ノイズフィルターで、画質・音質が変わる、と言っても、微々たるものだという認識があります。実際のところ「激変」とは程遠く、費用対効果が良いとは言えません。前稿で示しましたが、一般的なノイズ対策で変化が微小な理由は、家屋内の電磁界強度が高すぎて、その変化が隠れてしまうからです。(中略)
欧州と日本の差は、実に、電圧で約100倍にもなります。日本の場合、AV系以外の電線も、VVFからVVRに交換しなければ、電源の質は向上しないのです。(中略)
日本で、AV系以外の配線をVVRに交換すると、電磁ノイズは約10分の1に低下し、100分の1にはなりません。電磁ノイズは線材だけでなく、他の電気部材によっても輻射されますし、起電力を生じさせます。単に電流を供給するだけでなく、これらの電磁ノイズ対策を含めて本来の電気配線です。日本では、電磁ノイズ対策は要求されませんが、欧州諸国には厳しい規制があります。(中略)しかし、一ヵ所でも強い電磁ノイズの発生源があるだけで、全体の電磁界強度は下がりません。
VVF線のループ面積
<AV REVIEW 2008年5月号「片岡裕のホームシアター新論」第52回『正しい電源の知識と工事(その2)』>より
それでは、低電磁界配線を実現するために、同記事内で記されたポイントを列挙してみよう。
電気部材 ポイント
屋内配線 すべての屋内配線にはVVR(ツイスト線 => ループ面積が減少)を使用する。
各種の配線は、すべて別々のCD管を通し、それぞれの距離を50cm以上開ける。
天井裏での交差も立体とし、接触させないようにする。
壁コンセント・スイッチ取付枠 非金属のプラスチック枠を使う。金属は非磁性体のアルミでも強い電磁ノイズを出す。
枠を壁内のボックスに固定するネジはステンレス製が良い(普通は鉄製)。
枠に被せるプレート 非金属のプラッスチック。ネジも非金属。
コンセント・スイッチ類 尖頭電流で振動するので、J1の制振プレートで振動を止める。
コンセントは鰐口ではなく、ネジ止め式が最良。配線はツイストする。
LAN、TVアンテナ、電話線、電源線を、隣接した壁コンセントにしない。
ブレーカと分電盤 薄型のカセット式ブレーカが流行りだが、使わない。箱型のブレーカを使う。
各ブレーカの距離は10cm程度離す。配線はツイストする。
親ブレーカからの子ブレーカの配線は、互いに近接させないようにする。
親ブレーカの電磁ノイズが大きいため、子ブレーカから最低50cm程度離す。
金属板ではなく、高硬度の制振プラスティックに取り付ける。
親ブレーカへと各子ブレーカへの配線は一緒にせず、間隔をあける。
親ブレーカへの線径の太い線のツイストを緩めてはいけない。
親ブレーカから子ブレーカ、子ブレーカからコンセントまでの配線は、2スケア単線で十分。
それで電流が不足する時は200V給電とする。子ブレーカとコンセント間で導線の接続は厳禁。
配線とアース 分電盤から天井裏を経由して壁コンセントまでの配線は、通常の金属ではなくプラスティック製の
固定具を使い、建物の補強金具から離す。
各電源配線は、アンテナ線や電話線と離すだけでなく、互いに50cm程度離す。
天井裏の電源配線と信号線が交差する場合、立体交差とし、接触を避ける。
特に、エアコン、蛍光灯、換気扇の近傍は、電磁界強度が高いので、配線を近づけない。
配線の接続延長は通常しないが、する場合は鰐口式の接続器具は使わず、リングスリーブを使う。
部屋のコンセントへの配線は、壁の中を一周している場合があるが、非常に悪い結果になる。
日本の市街地では、電磁ノイズでアース電位が変動しているため、アースが必須の機器以外、
アースを取る必要はない。
アース線は、3線式のVVRを使い、単独のアース線が接地のため、電源配線から離れる距離を
最短にする。アース線と電源線との間は、ループ面積と同等。
低電磁ノイズ電気配線の基本は、『ツイスト線を用いてループ面積を減少し、金属を避けて電磁誘導を減らすこと』だ。さらに、
 『各電源用配線を接近させないことと、各信号線を接近させないこと』
 『ラグやスリーブの亜鉛を取り、接触抵抗を下げることも必須』
 『不要なアースは取らない』
 『ブレーカ、各配線、コンセントを振動させない』
 『電磁ノイズの大きな機器を使わない(電気機器の内部配線もツイストする)』

以上のように基本は単純だが、これを徹底しないと当然、全体の電磁界強度は下がらない。しかも『オール電化と太陽光発電やガス発電などによって、室内外の電磁界強度が年々高くなっている』そうだ。環境は劣悪になる一方だが、悲嘆していても状況は改善されない。屋内配線などは新築や改築時などでなければ、手を付けられないが、出来るところから打てる有効な対策もある。次頁からは、自分が行って効果があった対策例を、電源経路の順に沿って紹介していく。
なお、電気工事は資格が必要なので、必ず有資格者(近所の電気工事店など)に依頼するべし!!
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